内容説明
人とヒトデナシと呼ばれる怪異が共存している世界――。怪盗・無貌によって「顔」を奪われた仮面の探偵・秋津は、再起を求めて無貌を追い、楽園の島にたどり着く。その頃、秋津の妻の遙は、顔を奪った人々のもとを訪れている無貌を待っていた。彼を殺す覚悟を固めて。すれ違う思惑の果て、彼らを待つのは希望か、絶望か……!?失ったモノを取り戻すため、彼らの最後の戦いが始まる!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
CCC
7
終わりは穏やかだった。シリーズ通してみると終盤で驚きを与えてくれる話が多く、エンタメ性が高かった。この最終巻は驚きという点では弱さがあり、そこはらしくないと言えなくもないけれど、シリーズとしての余韻を壊さずに残してもくれたので、締めとして悪くはなかった。2022/05/25
たこやき
7
滅びゆく無貌。そして、そんな彼に対し思いを抱く人々。それらが繋がっていっての結末……。ある意味、願いをすべてかなえており、ある意味、悲劇的で……。ただ、どちらにしてもしっかりと伏線を回収し、世界観を纏めあげた結末は見事の一言。刊行ペースがあまり速くないので、新刊が出るたびに、「こうだったっけ?」という部分があったのがちょっともったいなかったけど、シリーズ全体の完成度は非常に高かった。良い完結編だった。2015/01/29
じゅんぢ
6
出会えて良かったと思える本って年をとるたびに少なくなってくるけど、このシリーズは良かった。スピンオフ書いてほしい。2016/07/22
ふじさん
6
前巻とは実質的に上下巻構成となる、シリーズ第七作・完結篇。登場人物達の複雑な思惑、混線した企みを整理した末に残っていたのは「他者と対話したい」「他者を理解したい」「自分を知りたい」「自分を理解して欲しい」という極めてシンプルな欲求だった。著者自身も明確には見えていなかったと思しき「楽園」の姿には、納得と同時に名状し難い哀しさも強く感じた。望に関しては結局前々作から殆ど触れられる事がなく、この点だけは心残り。それでも長く追ってきたシリーズの完結には感無量だった。著者の次回作がどんな内容になるか今から楽しみ。2015/02/22
yamabatu
5
無貌というヒトデナシの最後の物語。無貌によって顔を奪われた「探偵」は再び立ち上がる為に、自らの力だけで遥を救おうとする。無貌もまた「蜘蛛」によって植え付けられた死の記憶によって自らの最期を悟る。無貌が創りたかった楽園と、無貌によって全てを奪われた者達、自ら無貌に従った者達の終わりの物語。これほどの世界観を持つ物語を読めたことを幸せに思う。無貌の物語は終わったが、この世界は続いていくのだという幸せな余韻を味わえた。もう露草に会えなくなるのだと思うと、とても寂しい気分だ。2014/11/10