内容説明
昭和二十九年の洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司(そうじ)・紅司(こうじ)兄弟、従弟の藍司(あいじ)らのいる氷沼(ひぬま)家に、さらなる不幸が襲う。密室状態の風呂場で紅司が死んだのだ。そして叔父の橙二郎(とうじろう)もガスで絶命――殺人、事故?駆け出し歌手・奈々村久生(ななむらひさお)らの推理合戦が始まった。「推理小説史上の大傑作」が電子書籍で登場。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
426
★★★☆☆ 日本三大奇書の一つだが、他の二つより格段に読みやすい。ペダンティックなところは少し『黒死館殺人事件』ぽくもある。 氷沼家に次々と起こる殺人事件の真相を推理する、亜利夫、久生、藍ちゃん、藤木田老の4人。しかしそれが悉く荒唐無稽でハズレまくる。その様子はユーモラスでもある。多重解決、密室トリック、アリバイ崩し(?)など本格ミステリの王道的要素を詰め込みつつ、どこか感じる違和感。藤木田老は『カナリア殺人事件」のヴァンスの真似をするも不発だし、良く分からないまま下巻へ続く。2023/07/24
散文の詞
186
遅読のすすめで、5ヶ月程かけて読みました。 他の奇書と比べると、格段に読みやすいです。が、残念ながら、推理小説というよりも解説書という感じでがっかりです。 結局、下巻を読まないとどこに真実があるのかわからないみたいです。 ちょっと気になったのですが、その当時はガスに甘い匂いが付いていたのでしょうか? それから、キーワードの1つにもなっている“紅い十字架”が1箇所だけ“赤い十字架”になっていました。 しかも、鴻巣玄次が登場するなんて、なんて終わり方でしょう。 2023/03/10
ehirano1
174
日本三大奇書の一角ですが、「ドグラマグラ」のインパクトが強過ぎてまだ前半戦では奇書ぶりは姿を現さないようです。ただ、なんかもの凄く今までの読書では感じなかった違和感が終始漂っています。この違和感が後半戦は効いてくるのでしょうか?2023/08/13
青葉麒麟
129
この昭和の感じは好きだけれど、兎に角長い!!中々殺人が起きないし、皆で推理合戦するのは良いんだけれど、誰もズバッと犯人を名指ししないから、若干苛々( ̄^ ̄)でも氷沼家の鬱々とした感じは良い。子供の名前に色の漢字をつけるのは一寸憧れる。緑色の花って無いんだ。2013/05/23
HANA
93
ミステリ三大奇書の一つ。洞爺丸沈没事故から始まる氷沼家を襲う数々の不幸、探偵たちはこの謎を解けるか。というストーリーなのだが、人が死ぬという事実だけは起こっているのだが、その事実よりそれを取り巻く環境だけが事件そのものよりミステリへと傾斜していっている。何が起きているかという事実より、雰囲気だけが増大していくという怪談の名作を見せられているみたい。虚構が現実を凌駕するというか、現実を侵食しているというか。あと登場人物がなあ。社会派を経て新本格まで行った現在の目から見ると、厄介なミステリヲタにしか見えない。2022/05/14