内容説明
1944年、ナチス体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に建設された線路の先に強制収容所を目撃した、彼らのとった行動とは?──本屋大賞受賞第一作/電子書籍限定でカバーイラスト全体を特別収録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
456
逢坂 冬馬、2作目です。デビュー作にして本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』に続く第二長篇ということで読みました。ナチス体制に対抗するレジスタンス、エーデルヴァイス海賊団の少年少女青春譚、興味深く読みましたが、処女作が凄過ぎたので、平凡な作品に感じられました。残念、次作に期待です。 https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015611/2023/11/20
パトラッシュ
437
ヒトラー独裁下のナチスドイツでも、服従を強いる体制に反発する若者はいた。海賊を自称した彼らが故郷に強制収容所が開設されたと知り、妨害しようと立ち上がる。敗色濃厚な大戦末期で彼らを黙認して戦犯扱いを免れようと図る大人の狡さも描かれ、敗戦によっても理想の敗北と現実主義者が勝利する苦々しい結末に終わる。ただ旧ソ連や中国、北朝鮮での反体制派取り締まりの苛酷さに比べ、ナチスは相当甘かったとの印象は拭えない。前作のような殺し殺されの容赦ない戦争の描写もなく、エンタメとして成立してはいるが今ひとつ迫力に欠けてしまった。2023/11/21
青乃108号
428
「同志少女よ、敵を撃て」でデビューした作家の2作目。1作目はそのタイトル、装丁のビジュアル、そして内容が見事に一体となって結実した傑作であったと思う。比べてこの2作目、タイトルは今一意味不明であり、尚且つ装丁のセンスが壊滅的に悪い。書店で平積みを見ても手に取ろうと思わせない。そして内容である。第二次大戦末期のドイツの、ある地域の若者達の物語はドラマチックであり感動的ではあるが、その文章はいささか説明過多であり全編に渡ってくどさを感じさせる。言いたい事は判るがもっと端的に、シンプルに語って欲しかった。残念。2024/04/02
修一朗
354
’同志少女よ銃を撃て’では凄惨な市街戦スターリングラードの戦いについて知った。今度は全体主義体制での洗脳組織ヒトラーユーゲントに対抗して自由を望んだ集団エーデルヴァイス海賊団だ。全体主義体制下ではマイノリティが抑圧され居場所を奪われる。体制にすり寄らなかった人たちの歴史に目が開かれる思いだ。ロマ人を知っている日本人はどのぐらいいるだろうか?それでいてやらかすことは痛快。長延期信管を使った爆弾でトンネル・鉄橋をぶっ壊すなんて。自分探しのスタンド・バイ・ミーに対して,こっちは抑圧からの解放。今月のベスト。2024/06/16
旅するランナー
277
ナチスドイツの申し子、ヒトラー·ユーゲントは知っていたが、それに反抗·対抗する若者グループ、エーデルヴァイス海賊団は知らなかった。彼らを主人公にしたこの作品は、国家による戦争とホロコーストという暴走を見て見ぬふりし、喜んで騙されて身を守り、戦後保身を貫いた国民たちの恐ろしさ·おぞましさを悲しいまでに伝える。終章が序章に繋がり、人類への警鐘が打ち鳴らされ、歌われなかった歌が歌われ出す。2024/03/29