ちくま新書<br> 資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか

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ちくま新書
資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか

  • ISBN:9784480075659

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内容説明

なぜ経済が発展しても私たちは豊かになれないのか。それは、資本主義が私たちの生活や自然といった存立基盤を餌に成長する巨大なシステムだからである。資本主義そのものが問題である以上、「グリーン資本主義」や、表面的な格差是正などは目くらましにすぎず、根本的な解決策にはなりえない。破局から逃れる道はただ一つ、資本主義自体を拒絶することなのだ――。世界的政治学者が「共喰い資本主義」の実態を暴く話題作。(解説・白井聡)

目次

序章 共喰い資本主義──私たちはもう終わりなのか/第1章 雑食──なぜ資本主義の概念を拡張する必要があるのか/資本主義の復活/マルクスによる資本主義を規定する特徴/資本主義社会における市場の機能/〝秘められた場所〟の、さらにその背後/商品生産から社会的再生産へ/エコノミーからエコロジーへ/経済的なものから政治的なものへ/搾取から収奪へ/資本主義は経済よりも大きい何ものかである/制度化された社会秩序/境界闘争/「外部」という幻想/飽くなき共喰いの危機/第2章 飽くなき食欲──なぜ資本主義は構造的に人種差別的なのか/現存する人種的抑圧/資本主義と人種差別/交換、搾取、収奪/蓄積としての収奪──経済的議論/支配としての収奪──政治的議論/労働者と被支配民/「人種」という目印/人種差別による資本蓄積の歴史的体制/重商資本主義/リベラルな植民地資本主義/国家管理型資本主義/金融資本主義/資本主義はそれでもやはり人種差別的なのか/人種を超えた同盟/第3章 ケアの大喰らい──なぜ社会的再生産は資本主義の危機の主戦場なのか/社会的再生産の危機/生活世界のフリーライディング/ケアの大食漢である資本主義の歴史的闘争/植民地化と主婦化/フェミニストの苦闘/フォーディズムと家族賃金/共働き世帯/社会的再生産をめぐる境界闘争/もう一つの資本主義、あるいは新たな社会主義フェミニズムか/第4章  み込まれた自然──生態学的政治はなぜ環境を超えて反資本主義なのか/グリーンに染まる政治的行為者たち/生態学的政治と資本主義/資本主義の生態学的矛盾──構造的議論/もつれた矛盾/収奪の対象となる者/「自然」について語る三つの方法/蓄積の社会生態学的な体制/馬力/石炭/自動車の時代/新たな囲い込み、金融化された自然と「グリーン資本主義」/自然は時間と空間を貪り喰う/もつれた闘争/環境の枠を超えた、反資本主義的な生態学的政治のために/第5章 民主主義を解体する──なぜ資本主義は政治的危機が大好物なのか/政治主義という誤り/資本主義〝自体〟がはらむ政治的矛盾/公的権力/資本主義の歴史における政治的危機/ダブルパンチ/骨抜きにされる公的権力/歴史的に重大な岐路/ポピュリズムの波とパンデミック/カーテンの奥/空白期/第6章 思考の糧──二一世紀の社会主義はどんな意味を持つべきか/「社会主義」の復活/要約──資本主義とは何か/資本主義のどこが悪いのか/危機を生み出す傾向/社会主義とは何か/余剰をめぐる決定/社会主義社会における市場/二一世紀の社会主義/終章 マクロファージ──共喰い資本主義の乱痴気騒ぎ/新型コロナウイルス感染症/公的システムの崩壊/露呈した構造的人種差別/資本主義の不正義と不合理/謝辞/解説(白井聡)/原注/索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

89
資本主義体制の歴史を重商資本主義から始まり、植民地資本主義、国家管理型の独占資本主義。現在のグローバル化した金融資本主義、の4期に分け、そこでの搾取と収奪の仕組み、経済的生産と社会的再生産、人間と自然との関係、経済と政体との関係を論じている。資本主義体制下にある社会では、公的経済が投資家と所有者のために貨幣価値を積み上げ、それ以外の人の富を貪り喰うウロボロス状態にあるという。人類の持続可能性に影響を及ぼす共喰い資本主義を葬り去るにはどうすればいいのか。その解決策を、この本を読んで考えてみましょう。2024/02/02

おたま

57
この本は、今後資本主義社会をどう捉え、それを超える社会・運動をいかに構想するのか、そうした点に概観的ではあるが視座を与えるものだ。マルクスの行った資本主義「経済」の分析(剰余価値と資本の蓄積、搾取等)によっては捉えきれなかったその背景であり条件となるもの(収奪、労働力の再生産、自然環境、公的権力)をも内部化し資本主義「社会」の分析を行っている。それによって現在顕現してきた様々な問題にも応えられる見通しを提示しようとしている。今回は全体を捉えるべく流し読みとなったが、精読が必要。即再読しなくては。2023/10/12

よっち

40
なぜ経済が発展しても私たちは豊かになれないのか。生活や自然といった存立基盤を餌に成長する今の巨大な資本主義の実態に迫る一冊。16-18世紀の重商資本主義、19世紀のリベラルな植民地資本主義、20世紀の国家管理型資本主義、21世紀から現代に続く金融資本主義といった資本主義の歴史を踏まえつつ、人種差別、再生産、自然環境、国家権力という4つの側面からも解説していて、対比となる社会主義も考察していましたが、コロナの混乱を経た今の状況を、民主的プロセスで政治的に解決するのはなかなか難しいというのが正直な実感でした。2023/09/19

特盛

28
評価3.6/5。政治学者、ナンシーフレイザーによる、資本主義批判。その特徴を共食いと定義する。資本主義は、社会基盤(ケアや福祉)、自然、政治(所有権や契約などを担保)に依存している割に、これらを攻撃する。経済体制ではなく、社会の形の一つである、とする。それぞれの領域と経済の境界に摩擦が生じるが、”アンチ資本主義”という連帯が必要だと説く。マルクスによる資本主義の特徴や、重商主義、植民地主義、国家管理型資本主義、グローバル金融経済と遷移する段階で上記共食いがどの様になされてきたかを紐どく。2024/11/24

逆丸カツハ

21
本書は具体的な事例が少なかったよう感じた。色々と問題は山積みなのはわかる。資本主義に代わるものというのが一体どのようにしてありうるのか、考えていきたい。2023/10/02

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