内容説明
やれるか、やるべきか、じゃない。やるしかないときがある。2014年にロンドンで実際に起きた占拠運動をモデルとした小説。ホームレス・シェルターに住んでいたシングルマザーたちが、地方自治体の予算削減のために退去を迫られる。人種や世代を超えて女性たちが連帯して立ち上がり、公営住宅を占拠。一方、日本の新聞社ロンドン支局記者の史奈子がふと占拠地を訪れ、元恋人でアナキストの幸太もロンドンに来て現地の人々とどんどん交流し……。「自分たちでやってやれ」という精神(DIY)と、相互扶助(助け合い)と、シスターフッドの物語。
目次
序章 オープニング・スピーチ/第一章 それはオリンピックの翌年に始まった/第二章 自分たちでやってやれ/第三章 住まいは尊厳/終章 エピローグからまた始まる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
436
2014年にロンドンで実際に起こった占拠事件に基づいたモデル小説。ジェイドやギャビー、ローズといったキャラクターを設定することで、この事件にもっと親近感を持ってもらおうという狙いだと思われる。そして、それは一応は成功しているだろうが、逆に言うと事態の持つ深刻さが薄まったようにも思う。これは反ジェントリフィケーション闘争であり、実際はかなり過激なものでもあったのではないだろうか。少なくても占拠そのものが持つ意味は反ブルジョア闘争であり、持たざるものの権利獲得のための闘争だった。これが成功したということに⇒2023/11/15
starbro
285
ブレイディみかこは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書のモデルになった実在の事件があったこともあり、ノンフィクションのような小説でした。日本でも東京2020以降、不動産の高騰を含めた物価高&富裕層と貧困層の二極化が進行しているので、類似の事件が起きるかも知れません。 https://www.chikumashobo.co.jp/special/respect/2023/08/20
旅するランナー
239
スクウォッティングだぜ、ベイビー! アナキーでいこう! ジェントリフィケーションをぶっつぶせ! 自ら立ち上がる女性たちが、かっけーよー。日本各地で都市開発が進み、綺麗でこざっぱりした街になっていくのを見ていると、決して他人事じゃない。やはり、基本はリスペクトですね。2023/10/13
読特
163
2014年。東ロンドン。カーペンターズ居住区の実際の占拠事件が題材。公営の住居を追い出せれるシングルマザーたち。遊休の空き家があるというのに。民間住宅は高過ぎる。家賃の安い見知らぬ土地へ行けという。運動が始まる。思わぬ数の支持者たち。助け合い。占拠はひと月に及ぶ。抵抗は実る。…アナキストと新聞記者。架空の邦人カップルの登場で日本人にも身近な出来事であることを感じさせる。理不尽も「あきらめて受け入れる」。その繰り返しでは国そのものが疲弊する。まもなくGDPが世界4位となる。凋落に甘んじてばかりはいられない。2023/10/28
R
154
実際にあった運動を下地にした小説だそうだが、本当の活動、運動というものが描かれているように感じた。生きるために抗うということ、声をあげることと生活、人のつながりというものがとても自然であり、何よりも日常であるという中で、どうにかしてと闘う姿が印象的で、政治的な闘争というものは、この根元があってこその二次創作めいたものだなと思ったりした。誰かがではなく、自分がということを明確に意識してそのために戦う権利について考えるきっかけになる一冊だった。2024/01/18