内容説明
私の身体は、生き抜いた時間の証として破壊されていく
「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作。
打たれ、刻まれ、いつまでも自分の中から消えない言葉たちでした。この小説が本になって存在する世界に行きたい、と強く望みました。
――村田沙耶香
小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、
読後しばらく生きた心地がしなかった。
――金原ひとみ
文字に刻まれた肉体を通して、
書くという行為への怨嗟と快楽、
その特権性と欺瞞が鮮明に浮かび上がる。
――青山七恵
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1064
いろんな意味で話題になった芥川賞作品だが、作品それ自体を越えて、作者と主人公の釈華との相関性において語られることが多かったように思う。小説が一人称体で語られていることも、それを一層に増長したようだ。もちろん、それもまた作者の策術であったという見方もまた可能であるが。小説は、この他にも様々な企みに満ちているし、そのことが常に読者の立ち位置を困難なものにしてもいる。作品が我々に突き付けてくるものは重いが、小説の筆法は全体に軽いともいえる。それは作者の韜晦であり、また裏返しの開き直りなのでもあるのだが。2023/09/15
ehirano1
877
「普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢です」を始めとしたショッキングな数々のフレーズに圧倒されました。これらは毒であり怒りであると感じますが、とても深く考えさせられる「毒」と「怒」でした。2024/04/13
青乃108号
817
読後。気持ち悪い。ものすごくストレスを感じた。異端の小説。小説だから許されるのだろうがその発言は「言ってはいけない許されない」事だろう。何でこの様な小説が芥川賞なのか。大変な問題作であるし表現としては優れているとは思ったが、さすがにその主張は。あってもいいとは思うが世界の片隅であって欲しい。一躍脚光を浴びて広く一般に読まれるべきものではない。何か日本の社会構造の歪みのようなものを強く感じてしまい俺は絶望した。2023/09/15
bunmei
771
重度の障がいを抱えた筆者の、人として女としての心の叫びが聞こえてくる作品。芥川賞受賞スピーチも衝撃的だったが、本作もド肝を抜く性描写から始まり、医療器具やデジタルのカタカナ用語等、自分も改めて知った言葉が飛び交い、新たな日本語の迫力と豊かさを突きつけてくる。しかし、ここに綴られた言葉や文章は、決して心地よいモノではなく、こうした卑屈な願望には、健常者である自分は理解できないし、個人的には共感はできなかった。逆に、そこまで嫌悪感を抱かせた内容に、筆者のただならぬ凄みと強い叫びを感じた事には、間違いない。 2023/08/07
はにこ
727
障害者の苦しみは私には分からない。また健常者の私の悩みもこの作者には分からないだろう。それぞれが持つルサンチマンを改めて考えさせられる。本の重さを憎む、中絶を望む。そういう人も居るのね。2023/07/24