内容説明
「2024 新書大賞」第1位に選ばれました。
日常生活の必需品であり、知性や芸術の源である言語。なぜヒトはことばを持つのか? 子どもはいかにしてことばを覚えるのか? 巨大システムの言語の起源とは?ヒトとAIや動物の違いは? 言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることである。鍵は、オノマトペと、アブダクション(仮説形成)推論という人間特有の学ぶ力だ。認知科学者と言語学者が力を合わせ、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
305
むつみせんせーはオノマトペを研究されている事は知っていたので、それに言及される事は予想に難く無い事でした。然しそれで『言語の本質』に迫るのは、幾ら何でも言い過ぎなんじゃ無いかなって思いながら読みました。だって、例えば英語は日本語程使われる訳では無いですからね。でも、日本語オノマトペの柔軟性と、言語と言う牙城(の一部(?))の切り崩し方はえげつなかった。更にね、それだけでは無いのよ。覚えたい言葉:“アブダクション推論”ね。思考と言語獲得の両輪。他の動物とヒトを分つ物。ヒトの脳の進化の話も凄かった。2024/05/26
夜間飛行
281
言語は記号のシステムであるにもかかわらず、人はそれを対象と結びつけることができる。つまり人にとって言語は抽象的でありながら対象と直接繋がっている。これがAIに可能かどうか…を記号接地問題というらしい。人間の子供はいつどのようにして記号接地を果たすのか、それを考えるために二人の著者はオノマトペに着目する。言語学、認知科学、発達心理学を横断しながら、オノマトペの持つ言語的特徴と人の言語習得に果たす役割を考えていく。難しいことはともかく、お二人のオノマトペ愛が伝わってきて、心地よく脳を刺激してもらえる本だった。2024/10/16
trazom
261
言語の本質を考えるために大切なことを学んだ。身体に根差した経験との関係を問う記号接地問題。言語におけるアイコン性と恣意性との絶妙なバランス。ブートストラッピング・サイクルによる知識の増殖。人間独自の仮説形成推論(アブダクション)など。本書は、オノマトペ言語起源説に基づき、オノマトペに関する考察が充実している。その説の妥当性を判断する能力は私にはないが、「言語の起源」を辿り「言語の本質」を考えるという著者の目論見は十分に理解できる。接地問題と無縁である生成系AIが登場した今だからこそ、その重要性を認識する。2023/08/21
Kanonlicht
237
オノマトペとは何かを考察することからはじまり、言語とは何か、ヒトはどうやって言語というツールを獲得していったかにまで議論を展開する。人類の言語の進化を紐解くヒントとして語られたニカラグア手話にみる言語のアナログからデジタルへの変化が興味深い。赤ちゃんが言葉を覚えていく過程が、ヒトだけが持つ言語獲得の歴史そのものというのも納得。さて今後AIは、生物の中でヒトだけが持つアブダクション推論を取り込めるのか?2023/07/30
けんとまん1007
211
改めて言葉とは何かを考えた。何気なく使ってはいるが、人による違いや、時間による違いなど面白い。どうやって習得しているのかもある。体験を通して、それを繋げていくことに特徴があると思う。興味は尽きない。2023/11/22