講談社学術文庫<br> 『エセー』読解入門 モンテーニュと西洋の精神史

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講談社学術文庫
『エセー』読解入門 モンテーニュと西洋の精神史

  • 著者名:大西克智【著】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 講談社(2022/06発売)
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  • ISBN:9784065283615

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内容説明

ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-92年)の名は『エセー』とともに知られています。全訳だけでも5種類を数えるほど日本ではなじみのある著作ですが、岩波文庫で全6冊という分量、そして著者身が全2巻の初版(1580年)公刊後も改訂を続け、1588年には第3巻を増補するとともに最初の2巻に加筆を行った版を出し、さらに没年まで改訂を進めたため、さまざまな時期に書かれた文章が混在した書物になっていることから、決して分かりやすいとは言えないこともまた事実です。
そうした事情ゆえ、これまで『エセー』の入門書や概説書が陸続と出版されてきました。しかし、本書はそのどれとも異なる、決定版と断言できる1冊になっています。
断言できる理由は明確です。『エセー』第3巻第2章で、モンテーニュは「ここでは、私たち、つまり私の本と私自身が一致してひとつの道を進んでゆく。よそでは作者のことをわきに置いて作品をほめたりけなしたりできるが、ここではだめである」と記しています。つまり、「私の本」である『エセー』と「私」であるモンテーニュは不可分であるというわけですが、ここに示されているのは、作者の意図を知らなければその著作を理解できない、といった単純なことではありません。直後には「そのことをわきまえずに私の作品を判断する者は、私をというよりも、むしろ自分自身を傷つけることになるだろう」という言葉が続いているのですから。
なぜ『エセー』をモンテーニュから切り離して読む者は「自分自身を傷つける」ことになるのか――本書は、この問いに答えるために、『エセー』をモンテーニュから切り離すことなく、ていねいに読んでいきます。『エセー』を一度も読んだことがなくても、モンテーニュについて何も知らなくても、名前を聞いたことがあるだけでも読めるように書かれています。むしろ、そのような人のためにこそ、本書は書かれました。
本書によって大著の全容を知ることができるのはもちろん、本書を通して『エセー』を読むことは人間が紡いできた精神の歴史そのものを読むことにほかならないと気づくでしょう。そのような著作は他にありません。そして、そのことをありありと伝え、実践する『エセー』についての書物も、これまでありませんでした。渾身の書き下ろしによる1冊、ここに自信をもってお届けいたします。

[本書の内容]
第I部 若すぎた世紀
第1章 宗教戦争
第2章 十六世紀ルネサンス
第3章 モンテーニュのほうへ

第II部 「自分」・「私」・〈魂〉
第4章 執筆開始
第5章 マニフェスト
第6章 だれが?――〈魂〉が

第III部 〈魂〉の軌跡
第7章 もうひとつの背景
第8章 ソクラテスへの視線
終 章 百姓のかたわらで

目次

はじめに――四百年の時が流れて
プロローグ
【コラム】『エセー』の成り立ち
第I部 若すぎた世紀
第1章 宗教戦争
一 宗教改革の濁流
二 鉄腕ラ・ヌー
三 さまよえる信仰
第2章 十六世紀ルネサンス
一 知識人たち
二 時代精神
三 例外者として
第3章 モンテーニュのほうへ
一 公の人
二 崩壊の瀬戸際で
三 時流をあとに
モンテーニュ略年譜
第II部 「自分」・「私」・〈魂〉
第4章 執筆開始
一 帰 還
二 予期せぬ事態
三 「以前」から「いま」へ
【コラム】(A)、(B)、(C)再考
第5章 マニフェスト
一 「自分」への視線
二 「私」をめぐる虚像
三 「レイモン・スボンの弁護」
第6章 だれが?――〈魂〉が
一 三つのなぜ
二 何者でもない者であろうとする者
三 生きることの意味
第III部 〈魂〉の軌跡
第7章 もうひとつの背景
一 追い払われた「虻」
二 哲学化・宗教化
三 二千年後の再開
第8章 ソクラテスへの視線
一 世界にただひとつの像
二 内的抗争
三 神の独白劇
四 それぞれの必然性
終 章 百姓のかたわらで
一 記号的存在
二 未踏の前線
三 「最初の人間」
あとがき
人名・著作名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

103
モンテーニュは宗教戦争の時代に生きた。同じ神の名を唱え殺し合う姿に、自分たちこそ正義だと思い込む人の弱さを痛感したはずだ。だからこそどちらかが一方的に正しいと信じるだけでなく、相手の正義も慮る健全な懐疑主義こそ必要だと願って『エセー』を書いた。しかし4世紀以上たった今日なお、アメリカの分断やウクライナ戦争、イスラム国に中国の拡張主義と他者の正義を認めず相手を殺してでも押し通そうとする考え方は勢いを増し、懐疑主義の居場所など失われてしまった。「生きることこそ根本の輝かしい仕事」という言葉を噛みしめなくては。2022/11/22

ラウリスタ~

11
160ページまでで感想。冒頭二行目の「ゆいつ」に驚愕する(唯一をこう書くか)。これはおそらくタイトルが間違っている。「西洋の精神史:モンテーニュの魂」くらいが実際のところで、決してエセー入門ではない。学術的かと言われれば微妙で、エセーからの引用箇所はどこからの引用なのか情報が不足し、また注がひとつもなくそれぞれの記述がどの先行研究に依拠しているのか分からないので(講談社の方針?)、これを入門書として勉強しようにも先に進まない。著者の提示する「魂の軌跡」は、この形式(晦渋だが非学術的文体)で伝わるだろうか?2022/07/23

Masaki Iguchi

2
自分自身の探求、たどり着いた袋小路。モンテーニュの思索の跡を追いかけるワクワク感があった。2022/10/17

荏苒 byn

1
原典が難しいものではないまさにエッセイで、古代ローマの エピソード やエピグラフのような詩文 の引用や各タイトルでは分からない展開が醍醐味である。本書は入門とあるが、先ず原典から入るのが王道であろう。解説・案内の本としては、モンテーニュの鬼のような関根秀雄氏の著書がある。 本書は、時代背景を詳述しながら、モンテーニュの到達点をソクラテスに加えて領民をテーマに論じるところ、独自な論理展開を見せるようだ。browsed2024/04/07

1
モンテーニュが16世紀にあって自己了解の本源的な可能性を己のうちから汲み出そうとした奇異な存在であったこと、移り行く己を描きつつ知を求めながら一般化を拒絶し、カテゴライズして己を切り詰めることを頑なに拒否しながら、〈何者でもなくあること〉を描くというアポリアを本質的に含んだプロジェクトと格闘した軌跡、そしてペストに立ち会う農民たちに見たどんな学知をも超越する毅然とした死に対峙する様によってそれまでの彼の思考が灰に帰すような感覚に襲われたことなどといった彼の生き方と思索と奮闘の絡みあいが心に残った。2023/01/28

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