講談社学術文庫<br> 科学史・科学哲学入門

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講談社学術文庫
科学史・科学哲学入門

  • 著者名:村上陽一郎【著】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 講談社(2021/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065228395

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内容説明

私たちが生きている現代世界において、決定的な役割を果たしているのは、「西欧近代科学」であるといえるでしょう。しかし一方で「科学」は、時間的・空間的な規定を受けており、普遍的・絶対的ではないことを認識する必要があります。
本書では科学の起源を問い直します。ラテン語の《scientia(知識)》に淵源し、古代ギリシアに生まれた「自然現象を自然現象として認め、ある原理的な体系から、そうした個々の現象の説明を与える」という思惟構造が、西欧で独自の発展を遂げたものです。
キリスト教敵世界では、「神の意志」と「理性による世界支配」が、自然界と人間界両方の秩序の根幹であるとの考え方が」だんだんと支配的になります。そして中世ラテン世界は、十字軍を経て、アラビア文化圏から流入したギリシア・ローマの「科学」的遺産を吸収し、本格的な「西欧・近代・科学」へと発展していきました。その流れの中で、アニミズムの否定、自然の世俗化、それが進展しての実証主義が支配的になります。魔術から技術へという流れです。そして未来はつねに「進歩」をもたらすものでなければならないというドグマのようなものが支配的になったのです。
そしてこの科学の考え方が、私たちの思考法をどのように呪縛しているのかを、点検していきます。「観測の問題」「言語による外界の把握」「造られた科学」「《整合性》と《簡潔性》」などなど、実際の例を取り上げながらやさしく解説していきます。まさに「科学史」の入門書といえる一冊です。

【原本】
村上陽一郎『科学・哲学・宗教』(レグルス文庫)第三文明社 1977年刊

【目次】
I 科学・哲学・神学
 1 科学を準備したもの
 2 科学のなかのヴェクトル
 3 科学の反省
 4 未来への展望
キリスト教の自然観と科学
 1 キリスト教と近代合理主義
 2 キリスト教からの科学の「離脱」
 3 現代への示唆

II 科学的知識と信仰との異同
  植木屋の譬え話
  自然科学での実際の話
  誰が素粒子を見たか
 「見える」ことが「存在する」ことか
 「……を見る」と「……として見る」
 「……として見る」の基礎構造
 「ことば」による把握
 「……を見る」ことと「……を存在させる」こと
 科学は何によって造られるか
 自然科学的理論の「流行」
 簡潔性と整合性
 価値の世界との「整合性」
 「心」の私秘姓
 「こころ」の存在
 こころと素粒子
 自分の「こころ」と他人
 人間の「こころ」の特殊性
 こころの普遍化への二つの方法
あとがき
学術文庫版あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

to boy

21
昔から科学史に興味があったので図書館で借用。前半はキリスト教が西洋科学の成立・発展に与えた影響を考察。ガリレオ裁判に見られるようにキリスト教は科学と対立するものではなく、その世界観があったからこそ科学が発展したとの事。後半は哲学の存在論的は考察でちょっとうんざり。前から不思議に思っていた「日本ではなぜ物理・化学が生まれなかったのか」という疑問は解かれないまま残ってしまった。2021/05/16

みのくま

6
キリスト教と近代科学は反目するものではなく、近代科学には西欧キリスト教がインストールされている。それは自然と人間の明確な区分から、個人に対しての捉え方、そして神への信仰態度に至るまで近代科学と相似形を成している。では、非西欧圏である我々日本人は近代科学を我がものとする事はできないのであろうか。それについての著者の言及はひどく曖昧である。日本人の典型的な世界観から独自性について言及しているが、結局のところそれは近代科学を受容する上で障害になっているという結論になっている。多様性とは、という気がしてならない。2023/05/06

4
おもしろかった。キリスト教を科学的真理の弾圧者として仕立て上げる啓蒙主義的な歴史の描き方、それと平行する、知的活動と信仰の双極化という理解の、2つに対するアンチテーゼ。2021/06/11

ラツマピック天国

3
あとがきを見て、原本が1977年だということを知って驚きました。科学と信仰のその一筋縄ではいかない関係について書かれているのですが、このSNS全盛の社会にこそ一度考えてみなければならない問題だと思うのです。かつて心臓の左右を隔てる壁に穴が空いている説を信じるあまり、実際解剖してみて穴が見つからないと、「すごい!目に見えない穴が空いているんだ!」っていう結論になった時代の話は、現代の私たちにはまったく他人事と思えないのです。事実を積み上げているつもりが信仰にならないよう、真摯な態度でありたいものです。2021/09/20

nago

2
科学って何だっけ??とふと思い、読んだ。 科学と宗教(キリスト教)がどう影響しあったのか、気になっていたことの著者の考えが書いてあって、勉強になりました。2023/12/01

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