内容説明
人とロボットの親子の旅路、ついに終着へ。
「……次はこの子が、自らの幸福を掴む番ですから」
ライドーに連れ去られたハルの行方を追い、極東のウラジオストクに到達したテスタとイリナ。
そこでは生き残った人間たちが、飢えや貧困に苦しみながらも、地下に街を築いて生活していた。
ハルの行方の手がかりをつかむため、さらには知性機構に損傷を負ったアニラの修理のために、表向きは地下住人に従うテスタたち。
テスタは人工知能たちが作り上げた宗教機構・Atheistの構成員が地下にいることを知り、その者と繋がりを持つというAI研究者・オルガとの接触を待ち望む。しかし、突如現れたダスマンの襲来によって、テスタは地下に漂う不穏の正体を知ることに。
さらには、人間を消失させたバベルの真の目的にも期せずして近づいていく。
バベルとはいったい、何者だったのか。
彼女はなぜ、言語を放棄した『人間』を造ろうしたのか。
真実に触れたとき、テスタは思いがけない形で主人との再会を果たすことになる。
苦悩と罪、後悔と自責。
その末に、テスタが親として下した最後の決断。
獣だった娘と、病を患った軍用ロボットの親子の旅路は、ついに、終着を迎える。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんけー
17
読了♪足掛け3年、ハルとテスタ母と娘の叙事詩大団円の完結(⌒‐⌒)♪冒頭、ライドーに連れて行かれたハルを追って、テスタは自身のAIMD 症状と対峙しながらハルの安否を常に気遣って(ー_ー;)ウラジオストクの地下組織で運命的出会いをし、ハル救済を最優先にいながらにして?組織の人間達とも融和関係を築くテスタに感嘆。ストーリーのキーワードの人物との邂逅もあり、読んでてハラドキ(^_^;)テスタの母性愛の強さに作者の思いも理解しつつ、敢えて呑み込む。後半ハルの状態変化も巧く表現し、読者をホッとさせる♪然し、→2020/11/28
のれん
13
母が思う娘の幸せ。 自分が思うように生きて欲しいと思う傍ら、自らの意思で選択して欲しいとも思う。 こんな願いを思うことすら葛藤があるロボットという身でよくぞ最後まで見守り続けたと言いたい。まさに母は強し。 ただハル視点が少なく、テスタを描くので精一杯だったのが伝わってくる。あと一巻あれば丁寧な締めが見れたと思うのは無い物ねだりか。 アーロンなど別の立場のキャラも背景を想像させる書き方が優しく、意思についての作者の思う姿勢が見て取れる。 子が一人で生きるのを見届けられることが死ぬ定めの者の幸せ。良き親子愛。2021/04/18
ツバサ
13
遂に完結。まだ4巻だけど。長く間が空いてしまって少し記憶が曖昧ですが、綺麗な終わり方にしてくれて良かったです。ハルとテトラの関係が幸せな未来を掴んだんだと思うと胸にこみあげてくるものがありました。2020/11/19
真白優樹
10
ハルの行方を追いウラジオストクで人間のコミュニティーに近づく中、全ての真実が明かされる最終巻。―――冬が来たなら春が来る。例えそれが遠くとも。人の真実、機械の真実。全ての真実が静かに紐解かれ、様々な者達の思いが交わる中、テスタとハルの想いが交錯する巻であり、どこか切なくも確かに温かい、まるで染み入るかのように綺麗な結末が心に何かを齎してくれる巻である。例え時が過ぎてもきっと待っていてくれる。そう信じられるからこそ、いつかを願える。遠くから来た春との邂逅は、きっともうすぐ。 うん、最高に面白かった。2020/12/09
はれ@記録
3
銀の一滴。テスタ越しに見える描写が全体的に巧みで、情味があって流麗で魅せられる文なので様々な場面において先が気になる面白さに加えて、味読ができる。味読こそ小説の真髄であると思わせてくれる1冊。かつては人の命を奪う武器を造る軍用ロボットが、痛みと覚悟を背負い、鉄の心血を注いで母親であろうとし、母親であり続けた物語だった。2021/01/09