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内容説明
漫画家矢口高雄の隠れた名作、堂々の復刊!
令和の時代にこそ読み返したい「昭和」の貴重な物語。
802ページの大ボリューム。
東北は秋田、奥羽の山懐に包まれ、半年は雪の下に埋もれる厳しい自然、それが“おらが村”。
寂寥、倦怠、不安、欲望、喧騒、期待、そして夢とないまぜのなかで過ごす村人たち。
ゆかいな高山一家を中心に、彩り鮮やかな四季を通して矢口高雄の精緻なタッチが描く極上のヒューマンドラマ。
遠く忘れさられていく昭和時代の貴重な記録集。
【内容】
囲炉裏の章 横座/狐棲む里/ /師走/寒春/福寿草の香/
メメンコ/蕗のとう こぶしの章 儀衛門のクマ/カタゴの花筵/
テル坊主の池/つばくろ/ヒデコ/雨あがり 桑の実の章 ホトトギス/
忘憂草/UFO飛来/はたおり 嫁ききんの章 律子/十三夜/渋柿/
末枯れ/神無月/忍華/白春/ふきどり/せせらぎ/土橋/帰去来/
春宵 段落の章 廻春
経済活動・開発・天災・人災による環境変化から現代人は逃れられない。
だが、「日本人として決して忘れてはいけないもの」を矢口先生は僕らに教えてくれる。――宮沢和史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
25
著者のふるさとが描かれています。子供の頃ワクワクしながら読んだ釣りキチ三平。自分が東北地方に無条件な愛を感じるのも、あの頃があるからなのかもしれません。村はユートピアではありません。数々の問題を抱え、著者ですらこのお話で出てくる長男坊の恋愛をどうおさめるかで苦労したようです。けれども、笑いに満ち、おおらかなお父さんとどっしりしたお母さんがいるあたたかな家が、子供たちを支える姿がとても素敵でした。いま、秋田の豪雪地帯はどんな風景なんでしょうね。…面白かったけど、この人恋バナ書くべきじゃな~い。2020/01/23
roatsu
25
本当に良い作品が復刊されたと思う。矢口先生の真骨頂たる堂々たる大作。素朴だが豊かで瑞々しい往時の山里の暮らしと、そこに生きる人々の心模様を封じ込めたが如き豊潤で、そして悲しくもある物語。読んでいて涙が流れる。令和の時代にこそ日本人が20世紀後半からの狂騒の歩みの中で何を喪失してきたのか、真剣に問い直すべきだろう。自由の代償で脆弱な個人へと孤立化が進み、不安定な存立基盤に慄く一方で、同じ命を持つ他人に対し無関心となり残忍な凶行すら平然と起こせる者が後を絶たなくなった今の日本の荒んだ世相にしみじみと思う。2019/07/20
forest rise field
19
秋田の豪雪地帯、山奥の村のお話。こういう田舎には憧れさえする。しかし、住んでみないと分からない仲間意識や閉塞感があり、表面上見えない難しさもあると思う。高度経済成長期の東北の農村問題をある一家を通して表現。豪雪地帯の四季の移ろいを味わいながら悲しみも喜びも笑いも感じられる暖かい作品。絵が素晴らしい。2022/01/12
アメヲトコ
5
1973~75年連載、2019年文庫化。昭和30年代の著者の故郷・秋田県横手市の山村を舞台にした物語。丁寧に描かれた自然と集落の風景は美しく、一方で村社会特有の固陋さと閉塞感も描かれます。自分にはとても暮らせない世界だけれど。2021/07/16
山。
1
青森旅行で奥羽山脈の山裾を拝んでからずっと読みたかった本。豪雪地帯の集落で営まれる暮らしぶりが村会議員のお父さん一家を通して描かれる。働き者かつ温厚で実直、理性的な彼は隣人のトラブル、家族の悩み、社会問題に対峙することも厭わない彼はまさに物語の大黒柱(はぁと)。目を落とすたびにカラー写真ではと錯覚するほどの矢口先生の冴え渡るペンタッチは、雪や川の流れ、凍えるような寒気や春の輝きすら描きとる。すべてのページが眼福です。2021/04/11