内容説明
たとえそれが、人でなかったとしても。
これでも私は、身のほどはわきまえているつもりである。
武器修理ロボットとして、この世に産まれた命。
本来であればその機能を駆使して人間に貢献することが、機械知性の本懐とも言えるだろう。
しかし、どうもおかしい。
人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの、二人きりの旅路。
自由奔放な彼女から指示されるのは武器修理のみに留まらず、料理に洗濯と雑務ばかり。
「やるじゃねえか、テスタ。今日からメイドロボに転職だな」
全く、笑えない冗談である。
しかしそれでも、ハルは大切な主人であることに違いはない。
残された時を彼女のために捧げることが、私の本望なのである。
AIMD――論理的自己矛盾から生じる、人工知能の機能障害
私の体を蝕む、病の名である。
それは時間と共に知性を侵食し、いつか再起動すらも叶わぬ完全停止状態に陥るという、人工知能特有の、死に至る病。
命は決して、永遠ではないから。
だから、ハル。
せめて、最後のその時まで、あなたとともに――。
第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞を受賞した『平浦ファミリズム』の遍柳一がおくる、少しだけ未来の地球の、機械と、人と、命の物語。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
44
人がほとんどいなくなってしまった近未来。人工知能の機能障害を発症した軍事用ロボットのテスタと、彼女の障害を治すために共に旅する少女・ハルの旅先での様々な出会いを描く機械と人と命の物語。医工師を探し求める旅で出会ったイリアたち、少しずつ変わってゆくハルとの関係をどうすべきか葛藤し続けるテスタと、目的地で明かされる障害の真実。ハルを拾って試行錯誤しながら育ててきた二人の関係と、彼女たちを支えたロボットたちの存在があって、二人がこれまで育んできた絆に向き合い危機を乗り越える展開にはぐっと来るものがありました。 2018/06/18
まりも
40
武器修理ロボとして生まれ、今は主人であるハルとの二人きりで世界を旅するテスタ。これはそんなロボと女の子の物語である。あぁ、良いなぁ。ほとんどが消え去ってしまった世界。その世界で描かれるのはロボと女の子が家族となり、旅の中で絆を育む姿。命は決して永遠ではない、だからこそ最後まで共にいて成長を見守りたい。いつか終わりが来るからこそ、2人の旅は何よりも尊く、そして儚くて、こんなにも胸を打たれるのだろう。心にすっと沁み渡り、読後感にずっと浸りたくなる。そんな味わい深い1冊でした。是非とも多くの人に読んで貰いたい。2018/06/22
かんけー
38
初読み作家さん♪ラノベとしての体裁は17~8才?と言うハルと言う少女の設定のみ。SF ともファンタジーとも違う荒廃した世界観の舞台で、武器修理に特化した機能を持つテスタという女性?型AI 知能を内包したトカゲロボット(?)とハルと言う少女の物語。テスタの自身を卑下する自傷行為だけが読んでて悲しかった。SF によく在る機械生命体?と違う、AI 知性の心の慟哭、生身の人間と何ら変わらぬその有り様に「アンドロイドは電気羊の~」を連想するも、それも違うか?と。物語は余り起伏もなくテスタの懺悔の心情を切々に描写し→2018/06/30
真白優樹
22
人類がほぼ滅んだ世界で、死に至る病を抱える修理用ロボと彼女の主人である少女が旅をする物語。―――いつかの最後の一瞬まで正しさを探して。滅びかけた世界特有の終末感と謎が溢れる油断ならぬ世界で。そんな世界で、独特の絆を育みながら歩いてきた2人。命は有限、いつか尽きてしまう。この世界でも当たり前の状況の中、終わりを予感しつつ続く旅。そう、これは間違いなく家族の物語である。二人で手を繋ぎ、壁を一歩ずつ乗り越えていく二人の姿に胸が温かく熱くなる、前作を読まれた読者様にはお勧めしたい物語である。 次巻も楽しみである。2018/06/19
の
21
いい話。お子さんをもっている人におすすめかな。ハルとテスタの関係、憧れる。2018/07/16