縫わんばならん

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縫わんばならん

  • 著者名:古川真人【著】
  • 価格 ¥1,408(本体¥1,280)
  • 新潮社(2017/07発売)
  • ポイント 12pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784103507413

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内容説明

九州長崎の漁村の島を舞台に、一族をめぐる四世代の来歴を女性の語りで綴る。ほころびていく意識から湧き出る声を聴き取り、「縫わんばならん」と語り継ぐ……「過去に、記憶に、声に、もっと深く、まっすぐ向き合っていきたい」――語り合うことで持ち寄る記憶の断片を縫い合わせて結実したものがたりは、意識の自在な流れを縦横に編み込んで人生の彩りを織り成す。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

なゆ

66
今は亡き祖母がこんな風にしゃべっていた。何といっても言葉がなつかしくて読む。老いた祖母たちは、こんなふうに思考も行動もどこか夢うつつにぐるぐるしていたのだろうか。3つの章のうち二つは老いた姉妹それぞれの、もうひとつは親族が集まった通夜の夜の話となっている。それぞれの故人に関わる記憶の断片を集めて、持ち寄って、話し続ける。話してるうちに、本当に死んだのか分からなくなる感じ。『死んでいない者』っぽくもある。「そうたい、ここに居らんけん話しよるったい。もう話されんけん、代わりに話ばしてやりよるったい。」    2017/03/06

なゆ

62
吉川家サーガ4冊読んで、これがうろ覚えなので再読。なんと、家系図も記載されていたではないの。敬子婆とタッコ婆、美穂と加代子、稔と浩、世代ごとに見つめる一族の島の暮らしと歴史。そういえばまだ島暮らしなのは敬子婆だけだったんだ。3章目の通夜の話がいろんな意味で感慨深い。思う存分、亡くなった人の想い出を語り尽くす一夜。奇妙なテンション。それこそ、きっとこんなふうに賑やかに見送られることになるだろうと思っていた大伯母が昨年亡くなっていたのに、コロナの影響で家族葬で執り行ったと後で聞かされた寂しさが蘇る。2021/02/18

ちょき

43
読了感が高村薫「土の記」と被る。老いの"美学"と書くと言い過ぎだが老いによる精神状態の描写がなんともいえない。白昼夢のような状態かと想像する。体の大半は不自由でも動く部分を使って生きていく。長崎の佐世保弁にちかいコアな方言が会話パートで飛び出すが、かなり正確に表現されていると思う。博多弁との違い、若者が使うやや標準語よりの方言など、微妙なところが絶妙。ローカル色強し。そこいらの田舎にゴロゴロしているような話だったが小説になるとこういうものかもしれない。登場人物が多く途中でわからなくなって一から再読した。2017/05/13

井月 奎(いづき けい)

39
南国に住む老人、その周りの人たちの様子を描きながら人の心の様子を映し出す佳作です。静かな筆致は凪の海面を思わせます。凪の日の海はそれでもその下ではいろいろの流れがあるでしょう。人々の生活も同じです。供に流れぶつかりすれ違う。海面にはかすかな揺らぎとして現れるのでしょうか?人が人を思うとき、思い出すときそれが生者であればつながりとなり、亡者にとっては代弁ともなることも体感をもって思い出させてくれます。滋味あふれる物語は読み終えたあと少し体温が上がったように感じました。 2021/07/17

いっち

35
長崎の島を舞台とした、四世代の一族の物語。祖母や孫などの多様な視点で、方言を交えて語られる。芥川賞候補作で、これほど選考委員に「退屈」と評された作品はあったか。確かに退屈。一族に目立った特徴はなく、大きな出来事はない。現実や夢、記憶が入り混じった老婆の語りや、一族が会する葬式の話。登場人物に魅力をいまいち感じられない。普通すぎる。それでもこの一族の声に耳をすましてしまう。濃密な文章と心理描写で最後まで読めてしまう。多様な人物に憑依して書ける才能が、古川さんにはある。死者を語ることで、記憶を縫い続けていく。2020/02/11

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