内容説明
宿主にとっての『幸せ』とは――。
「花がどうやって子孫を残すか知っているか?」
「受粉だろ。雌しべに花粉がついて――」
「そう……それが普通だ。奇妙だと思わんか? あの宿主も、花は花だ。だが奴らは独力で花を咲かせ、他所から何かが入った気配もないのに、やがて種子を生み出す」
黒服に言われるまで、ルッカは考えたこともなかった。『花』はそういうものだから、と思ってそれで納得してしまっていたのだ。
「有性生殖する生物は、遺伝子を混ぜることで、一つの種の中にも多様性を生み出している。皆が同じ弱点を持っていては簡単に滅びるからだ。事実、宿主も個々の能力に差異があり、特異的な能力を得た個体とて、稀にだが確認されている」
そこまで言って、黒服は鋭く目を細めた。
「仮に、奴らが無性生殖で増えているとしよう。何かがあるはずだ。生物としての弱点を補う、何らかのカラクリが……」
ルッカは以前黒服との会話を思い出した。どうして今その話を思い出したのか。それはリディの生まれた地でルッカの目の前に、リディと同じ真紅の花を咲かせた宿主が現れたからであった――。
花のために生きる宿主の少女と宿主のために生きる青年の物語、第二巻。
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そのぼん
17
シリーズ第2弾。かなり前に一巻を読みましたが、すんなり世界に入り込めました。(前の巻の話はすっかり忘れていましたが・・・)人間に寄生し、頭に『花』を咲かせる生命体が存在する世界のお話でした。人間と『宿主』との相容れないもの同士の関係がきめ細やかに描かれていました。2016/01/02
1_k
6
ちょっと展開のさせ方は舌足らず、というか根本的な設定のようにエンタメっぽくない。これも含めて本作の味なのだろうか。「魔女」のようにガガガでなければ出せない味なので、売上が芳しくなくとも、業界の片隅にひっそりとあってほしい一輪の花ではある。2014/09/21
ともっか
3
どう続けるのかと思ったが異種族の折り合いを探す方向に来るとは。ルッカとリディの関係が中々面白い。落とし所が気になるので是非続いてほしい。2014/09/25
ととむ
2
バトルモノとしては限界かな…設定は面白いからその辺生かしてほしいなあ2014/09/28
FF5
1
前巻で変わった主人公の考え、宿主と人間のバランスを保つということを元に展開した結果、1巻ほどの爆発力はないですが安定して読める作品に仕上がってきた感覚を受けます。だが一方で、サージェの結末はいい感じに後味が悪く、アークの思惑含め次が気になります。2015/05/23