内容説明
魔狼消失!? ケースケ絶体絶命の危機!!
瞼を開いた僕の視界は、少女の顔に占領されていた。肩まで切りそろえられた黒い髪。陶器のような白い肌。僕のよく知る女の子。
「未由?」
名前を呼ぼうとして、声が出せないことに気づく。僕の口は未由の唇に塞がれていた。
「よかった。起きてくれた」
唇を触れ合せながら呟く未由。その彼女の口元から赤い雫が伝う。瞳からは涙が零れる。
「未由、いったい何を……」
問いかけると、彼女はその表情に暗い影を宿しながら、少しずつ僕の傍から遠ざかった。背後に見えた景色は――動かない雲。張り付いた空、どこまでも続く白い砂浜。僕はここでずいぶん長い間気を失っていたらしい。
「啓介くんがすごく苦しそうで……全然目を覚ましてくれなくて……腕も、そんな状態で……見てられなくて……」
未由は震える声で言った。そして僕はひとつだけ「現実」を把握する。もう無いんだ。僕の――≪魔狼≫は。僕はもう「英雄」ではないんだ。途方にくれながら、未由とふたりきり、僕はその奇妙な世界のなかをとぼとぼとさまよい歩く。あてどなくその世界――アリッサの故郷である≪方舟≫の内部を、未由とふたりで歩き続けた。
ケースケ絶体絶命の第十巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
9
地味だが嵐の前の静けさとみて次巻を待ちたい。2010/10/24
カインズ
4
【心の強い主人公】口絵を見て思う。前回のラストは、何だったのかと。由衣戦では、兄妹の絆が現れていて良かった。2011/08/15
ちゃか
3
ついに方舟に足を踏み入れた主人公。それは望まぬ結果ではあったが、そこで過ごした事によって、新たな出会いと気づきを得る。これから佳境、といった感じでいいですね。 2012/11/11
あかなぎ
3
一巻から会話に出ていた「方舟」でのお話。ヴェルやスーラ、ウルトと言った3姉妹もそろって登場。今回は未由の啓介への想いの伝え方がかなりグッときてしまった。ただ、高位存在や魔術での戦闘はあまりなかったのだけが残念。でも今回は次の巻への下準備だろうし続きに期待。2010/11/11
水無月冬弥
3
未由が可愛くて哀しすぎる。なんというか正妻タイプだよなあ。これで落ちないのが逆に凄いなあ2010/11/06