内容説明
我と我が嘘に疲れ果てた作家が誰にも見せないと決めて書いた本当のことだけを綴った日記。僕は作家だ。だが執筆中の小説はまったく進まない。たまには本当のことを書きたい。これはフィクションに疲れたマイナー作家の、ささやかな休暇としての日記だ。誰にも見せないのだから嘘は書かない。そういう意味で、僕はこの日記を真実真正日記と名づけよう。虚と実のあわいを絶妙に描き出す慟哭の記録。(講談社文庫)
目次
日記の書きはじめ/比々さん/文差点の騒動
新店コンドル/矢村の素晴らしい文学/暴動の予感
猿の不安/執筆の停滞/鈍くさい店でスカタン
ブライトな若者/コンドルの不始末/花火と爆撃狂
嫉妬の感情/撮影所見学/鰻の食べ過ぎで苦しい
言葉が通じない/海もどきの怪/農業の勉強
寂しいおっさん/頭のなかの猿/辺多子さんの「茶漬節」
僕は幕下/バンド名決定/地獄の忘年会
奴隷制復活論/メッセージソングの失敗/串カツ屋で大喧嘩
縁起をかつぐ癖/ふわふわの兄ちゃんとオガタ/比々さんを招待〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chanvesa
27
エッセイだと思って手に取ったら、小説だった。「悦楽のムラート」が段々むちゃむちゃになっていく過程と、作中の僕が没落していく、この関わりが面白い。『告白』と同時期に書かれていたと、解説にあったけど、江美保元(そもそも何て読むんだろう…)の狼藉のやるせなさとなんか関係がありそうな。2015/07/25
*mayu*
23
仕事も副業もバンド活動も上手くいかないマイナー作家が描く真実(ほんとう)しか書かない日記と、その中で描く小説…。結構めちゃくちゃな作品に見えて、プライベートが上手くいってる時は小説もノッてるし、上手くいかない時は作品内がめちゃくちゃな世界になるところが面白い。結局真実を描こうとしてもその中には虚構しかない…ということでなんだかやるせない内容なんだけれども町田節はしっかり効いていてリズム良く読める。しかし本当にこの人の作品は摩訶不思議な世界観で作者の意図を理解しにくい筈なのに癖になるんだよなぁ(笑)2015/08/24
miroku
19
韜晦する純真。あるいは軽薄ぶる知性。それは、人間的なあまりに人間的な・・・。町田康は面白うてやがて・・・。ラストはちょっとやられたね♪2013/09/25
わっぱっぱ
12
この内容に「真実真正」などと名付ける著者もすごいが、半分くらいまで実話だと思って読んでいた自分も結構すごい。そして読み終えてみると不思議、やはり真実のように思えたりする。そう、これは現実のデフォルメ、そして我々が真実と思って見聞きしている報道こそが、リアル臭をまとった嘘なのだ。 なんて、著者の語感の快適さの前には些末なことである。嘘とか本当とか、そんなんどーでもいーし。何思ったって自由なんだよ。心にあるものぜんぶ真実なんだもん。2016/09/27
kazi
11
著者のマジなんだかふざけてんだかわからないような作風が大好きだ。相変わらずぶっ飛んでた。2019/05/09