内容説明
科学とは無縁の世界で育った青年はある日、月世界を目指して天空へと伸びる「天橋立」に向かう。そこで待っていたものは、とびきり可愛い謎の少女だった―無垢な青年が抱く、宇宙への憧れとみずみずしい初恋を描いた表題作のほか、ロボット三原則の盲点が引き起こす悲劇を描いた「灰色の車輪」、宇宙論とクトゥルフ神話が驚愕の融合を果たす「時空争奪」など、ヴァラエティに富んだ全8篇収録の傑作ハードSF短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
亮人
28
長く積んでいたものを何となく手に取ってみた。(わかっていたけど)なんという表紙詐欺!どの話もどろっとグロ描写しているにもかかわらず、予想を裏切る展開が用意されていて標準以上の満足度。「あの日」「銀の舟」あたりが特におもしろかった。2012/09/24
神太郎
26
αΩの小林泰三さんってのと表紙で買う。小林泰三入門と言える本。この作家さんとはとても相性が、いいのかサクサク読めた。あっという間の読書体験。エログロスプラッターそこにSFとホラーが混ざったらほぼ最強!灰色の車輪と時空争奪が好き。2016/09/07
のれん
18
早すぎる逝去となってしまわれた現代日本SF大家の一人による短編集。 SF古典ギミックを使いながら、構成や視点によるトリックで読者を最後まで離さないエンタメ作が多数揃っている。 特に「あの日」「銀の舟」などはSF短編小説(ファン)あるあるをネタにしている所があってとても好き。 どれもネタが楽しいが、中でも一際輝くのが「時空争奪」。理不尽でグロテスクな責め方は筒井康隆を源流にしているようにも見えて、ホラー演出が新機軸となり、後のトンデモSFに繋がっていく。積み重なるSF史の証人にして娯楽小説の鑑。2021/06/07
活字スキー
18
ヤスミン追悼&第41回日本SF大賞功績賞受賞おめでとうございます再読。ハヤカワJコレ版を読んだのは随分昔なので、内容まで覚えてたのは8編中のみっつくらいだった。どれもしゃーしゃーと破天荒かつ容赦なく人間性をオモチャにしながらもヘンに理屈はガッチリしてるヤスミン節でもだえるような読み心地。最大の収穫は、ヤスミンに対してずっと抱いていた「角川ホラーで商業デビューしたけど本質的にはSF作家」というイメージを、文庫版あとがきで本人の言葉でハッキリと確認出来たこと。やっぱりね🖤 2021/05/17
CCC
16
短編集。表紙はかわいいし、表題作もそれに合った内容でなるほどという感じだけど、全体的には着想とロジックに重点が置かれていた。外部から地球を見ている作品も多かった。どれも理解しがたい対象として地球を書いていて、そこに作者らしさを感じた。特に好きな話は『銀の舟』『盗まれた昨日』『時空争奪』あたり。『銀の舟』は地球の扱いが面白かった。『盗まれた昨日』は同著者の『失われた過去と未来の犯罪』に近い設定。こちらの方が気味悪さがあり、より好みだったかも。『時空争奪』はモチーフ、スケール、発想が良く、迫力ある作品だった。2022/10/18