内容説明
女三の宮が産んだ不義の子・薫。美男だがどこか陰のある薫と、明るさに満ちた今上帝の第三皇子・匂宮。対照的な二人が、同じ女性を愛したことで迎える、悲しみにみちた結末とは……。いつの世も変わらない、人々の繊細な心の動きをすくいとり、流麗にうたい上げた、日本文学史に輝く最高傑作「源氏物語」。情熱の歌人・與謝野晶子がその生涯を通じて取り組んだ54帖全訳、完結! 第五巻には「早蕨」から「夢の浮橋」までを収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
15
最終巻が一番面白かった。浮舟の煩悶に泣いた。まさか源氏物語に泣かされるとはと自分でも意外だったがそれくらいドラマチックな展開だった。この時代の女性は不遇であるなあというのがやはり最初に出てくる感想。宮廷で読まれるにはスキャンダラスすぎる内容だったろうなというのが二番目。でも読めてよかった。本当は原文で読みたいが学力の問題と相談になる・・・勉強しなおしてみようかな?2012/04/22
よしひろ
8
これだけの長大な作品を高いクオリティで描き切る紫色部は本当にすごい。時のふるいに生き残る、普遍的でみずみずしい生命力がある。人々の胸を打つ優美な世界がある。日本文化と物語の真髄を知るには、まずは「源氏物語」を読め、と言いたい。2015/09/20
アリョーシャ
5
ここまでいくつもの見せ場があったが、最後はまさしく切り札を出してきたという感がある。思い返せば、光源氏と頭中将、夕霧と柏木、薫と匂宮と、いずれの世代も二人の人物を対比させて際立たせてきた。これらのうちでも、薫と匂宮の描き方は、「香りをまとっている」という設定の使いこなしも含め、見事としか言いようがない。宇治十帖は、登場人物の感情の振れ幅も大きいが、読者の側の心も大きく揺り動かされるものだった。結末に至る最後の数帖は、強風に背中をあおられながら、駆け抜けるようにして読み切った。すばらしい読書体験だった。2015/10/19
Kei
4
いきなりこんな物語を書ける紫式部がすごいですね。2023/05/09
shou
3
宇治十帖はドラマティックな恋愛模様ながら、源氏の時代のようなスケール感はないし、どの登場人物にも、煩悶しつつも誇り高くあろうとしていた時代の人々とは違う幼さを感じる。完璧な理想像ではない分、親しみやすいのだけど。最後に登場するヒロイン浮舟が自身で運命を決め、仏の道に入るという結末には、やはりこれは女性たちの物語だったんだなと思う。2013/06/27