ハヤカワepi文庫<br> わたしたちが孤児だったころ

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ハヤカワepi文庫
わたしたちが孤児だったころ

  • ISBN:9784151200342

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内容説明

上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクスは十歳で孤児となった。貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった美しい母が相次いで謎の失踪を遂げたのだ。ロンドンに帰され寄宿学校に学んだバンクスは、両親の行方を突き止めるために探偵を志す。やがて幾多の難事件を解決し社交界でも名声を得た彼は、戦火にまみれる上海へと舞い戻るが……現代イギリス最高の作家が渾身の力で描く記憶と過去をめぐる至高の冒険譚。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

201
ミステリーしたての長編小説。500頁超に及ぶが、長い長い助走を経た最後の50頁にこそ、カズオ・イシグロの小説のエッセンスが詰まっている。読み終わって、その寂寥感の中にしみじみとした感動に浸れるのは、まさにカズオ・イシグロだ。2012/03/24

パトラッシュ

163
イシグロ作品は常に「信用できない語り手」の回想として展開するが、本作ではとりわけ色濃い。1910年代の上海とはいえ英国人女性の失踪を領事館関係者が探らず、主人公の親探しに無関係な人間や事件が語られるのは明らかに「捏造された記憶」だ。最も近い存在だったアキラや叔父が、実際は記憶通りの人間ではなかった。作者はこうした設定で、記憶に基づいて生きる人間の不安定さを描こうとしたのか。特に親と引き離された孤児は、わずかな親の記憶だけが頼りだ。主人公は別の孤児を引き取ることで明確な記憶の絆を手に入れる救いを得ているが。2020/02/26

れみ

144
イギリス人のクリストファー・バンクスは10歳の頃に相次いで失踪した両親の行方を探すため探偵を志し、ついにその目的を果たすため、上海へ。紆余曲折を経て知り得た両親に関する情報を知ったとき、私には彼は実はもっと前から「孤児」になっていたのかも…と思えてしまった。彼には知ろうとせずに生きていく道もあったはずだけど知ろうとせずにはいられない衝動に突き動かされたのかなあ。カズオ・イシグロさんの作品を読むのはこれで3作目で、今までに味わった独特の世界観は一緒だけど、そのなかではいちばんエンタテイメント性を感じたかな。2018/06/19

ペグ

119
ずっと以前の渋谷のブックファーストの壁面に大きな看板。書名と顔写真がとても印象的でした。さらりと感情を抑えた文体、けれど、だからこそ主人公や登場人物の心に忍び込んだ深い闇を見ます。大部分、過去の思い出が描かれている為、語り手に疑念がよぎりました。真実はどこにあるのか〜読み進むうちに過酷な事実が薄皮を剥ぐように明らかになっていく。流石、カズオ・イシグロの巧さです。古川日出男さんの解説が素晴らしい。「もう、よせよ。忘れた振りなんかするなよ」〜大切にしたい本が又一冊増えました。2020/11/21

あきぽん

119
20世紀前半のロンドンと上海を舞台にした、カズオ・イシグロお得意の「記憶と忘却」をテーマにした物語。この時期に私の祖父が上海に住んでいたらしいので、是非読まねば!と読んだ。ある程度年齢を重ねれば、大抵の人は子供時代をこういう風に回想し、それをとり戻したいと願うのだろう。それでも現実は時に残酷で、時代は変わり続け、人生はさらに進んでいく。それにしても、この時期の上海は本当に国際都市だったのだな。2018/01/20

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