内容説明
考えてもみて下さい。生まれて一度も人に本当の言葉を伝えたことのない人間が、どんなに不安を抱えながら自分の言葉を伝えているのかを――。
皆が自閉症者に感じる「なぜ?」について当事者の気持ちをQ&Aで綴り、大反響を呼んだ前著『自閉症の僕が跳びはねる理由』。高校生編となる本書では、会話ができず苦しみ、もがく中で気づいた喜びや希望が活き活きと綴られる。
文庫化にあたり16歳当時の貴重な日記を初公開! 瑞々しい感性とリアルな心の声が胸を打つ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
150
自閉症の人の気持ちを理解しようと前作を読んだとき、私はどうも受け入れがたかった。それは「解ってください」、「お願いします」の連続に辟易したからだ。そして私は東田氏がこれほど素晴らしい文才を持っているのに、どうしてそんなに卑屈になっているのかに腹を立てていたことに気付かされた。お願いなんてする必要はない。卑屈になる必要はない。なぜなら君は立派な社会の一員で、むしろ普通の人にはない素晴らしい才能に満ちているのだから、胸を張ってほしいと思ったのだ。東田氏がもっと高く跳びはねられるような社会になれるといいなぁ。2017/11/08
佐島楓
71
理解されないということは、人にとってつらいことである。著者である東田さんは、自己分析がきちっとできているのに、思うようにならない自分自身に苦しみ続けている。他者に対する想像力は、障がいのあるなしにかかわらない。東田さんの孤独と「理解してほしい」という叫びに触れて、涙が出た。2016/08/17
アナーキー靴下
67
前作は13歳のとき、こちらは16歳頃に書いたものとのこと。自閉症という自分らしさを大切にしつつ、社会生活に適応するため歩み続ける著者は、3年前よりさらに優しく力強い印象。ずっと自閉症の話をしているはずなのに、読んでいると、著者が自閉症ということを忘れてしまう。というか、まるで自分自身の心が語りかけ、大切なことを教えてくれるかのように思えてくる。過去を忘れる機能が生きる希望に繋がると思っていたけれど、問題解決という理想を描けることが希望への近道だったんだ。きっと人間は正の走光性生物、一緒に跳びはねたい。2021/04/30
とろこ
57
高校生編。前作を読んだ時は、(一口に“自閉症”といっても、それぞれ個性がある訳だから、この本を読んだ人たちが、自閉症の人は、みんな、この著者と同じ感覚だって勘違いしないかな)と心配した。が、今作では、何度も「僕の場合は」と書いてあり、素直に読めた。自閉症の方が抱える感覚や不安などがQ&Aの形式で書かれているのだが、苦しみ、葛藤しながらも、自らの内面を掘り下げようとする姿には頭が下がる。また、自閉症や他の障害・病気の有無に関わらず、人間として大切なことは共通しているのだと気付かされる。2017/03/10
Nyah
53
前巻は中学生時代、2巻は通信制高校三年生になった著者の思い。「どのような援助をして欲しいですか?/・笑顔で接して下さい。・わかりやすく、はっきりした口調で話して下さい。・要点をしぼって、短い文章で話して下さい。・指示するときには、1回にひとつだけにして下さい。・僕の言いなりにはならないで下さい。・危ないとき、悪い行動をやりそうになったときには、そうする前に注意して止めて下さい。」/「ここで待って」「ここ」母のは一点、僕のはこの辺り。「ここ」の使用法は多数ある。曖昧な事をその都度判断するのは難しい。2022/08/14