内容説明
魔性が宿る美しいものに、近づいてはならない。追い求めてはいけないと感じながらも、魔性にとりこまれていく……。信長が唯一安土城を描かせた安土屏風。欧州で行方知れずとなったその絵が、数世紀の時を超え現代に悲劇を呼ぶ。美に潜む魔を描く幻想小説。〈単行本「安土城幻記」を改題〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
72
これは阿刀田さんの長編ミステリーです。しかも安土屏風をめぐるものでそのなぞとか安土城とか芸術的な薀蓄などがあって私には楽しめるものでした。場所もフランス旅行などでのことから、様々な人物がかかわっていてまた亡くなったりしてということで楽しめます。2015/07/06
Take@磨穿鉄靴
54
史実を混ぜたファンタジーのようなほんのりホラーのようなお話。最初はあれ?これはエッセイなのかな?と勘違いするようなフラットな始まりで少しずつ話が進む。オカルト的な妖気とかはちょっと理解の範疇を越えるけど全体を通して良い渋味が出ていたと思う。舟のお迎えも奥様が一緒に乗ってるなら抗わず「行きましょうかね(^_^)」と言えそう。たまにはこのようなお話も乙。★★★☆☆2019/05/20
takaC
38
「幻の舟」は四人乗り。これ大事。2015/02/11
S.Mori
20
狩野永徳が描いた「安土屏風」を軸に物語が進みます。永徳の絵に魅せられた主人公が調査を進めるうちに、悲劇が起こり始め、彼は仲の良かった妻を失ってしまい……。美しい屏風の中から舟が現実の世界に進んでくるという描写が、幻想的で美しく、同時に恐怖を感じました。人を虜にしてしまう美術品に潜む恐ろしさを巧みに形象化しています。作者は短編の名手として知られた人ですが、こういう作品を読むと長編も巧いと感じます。曖昧なままの結末がかえって効果的で、じわじわと恐怖を感じました。2020/07/26
Yoko Oishi
7
これは面白い。狩野永徳の描いた屏風絵を巡る物語。見た人がみんな謎の死を遂げていく。史実と織り交ぜられていて、どこまでが真実なのかわからなくなる。永徳の絵に魅せられた夫妻、旅先で会った日本贔屓のフランス人、国内で出会った不思議な男とが幻の舟に翻弄されていく様子が面白い。あとがきで遠藤周作もこの絵を探していて亡くなったという話もゾクッとした。2015/01/08